Bom Tempo
レーベル: CONCORD RECORDS
品 番: 7231575
価 格: 1800円(輸入盤)
製造国:アメリカ/2010年発表
買ったお店:HMVルミネ池袋店

セルメンは、「愛すべき無節操」だと僕は思っておりまして、彼の歴代の作品をざっと眺めてみてもジャズ、ボサノヴァ、欧米ヒット曲のカバー、ディスコ、サンバへギ、ヒップホップとまあ何でもありです。

そのせいかブラジル音楽愛好家の人達からは「入門用」的な目で見られがちで、特にサンバ一筋の人は彼の新作など眼中にないでしょう。しかし、ジョアン・ジルベルトという名は知らなくても、セルジオ・メンデスなら知っているという人は世界中に五万とおりますし、セルメンという男がいなかったらブラジル音楽が日本にここまで浸透する事はなかったろう、と僕は考えます。

さて、コンコードからのリリース第三弾となるのが本作「 Bom Tempo」であります。前二作は、ブラック・アイド・ピースのウィル・アイ・アムがプロデュースを担当し、ブラジル66時代のボサノヴァ系レパートリーをヒップホップに再構築していましたが、今回はセルフ・プロデュースによる、半世紀近くに及ぶ自身のキャリアの集大成的な作品となっています。

過去のレパートリーの再演という手法は前二作の路線を踏襲していますが、今回は生楽器の割合をかなり増やし、明るく開放的な音楽になっています。その違いは大ヒットした06年「タイムレス」収録の「マシュ・ケ・ナダ」と本作収録の「パイス・トロピカル」を聴き比べると一目瞭然です。共にブラジル66時代に取り上げたジョルジュ・ベン作品の再演ですが、「マシュ・ケ・ナダ」がヒップホップの低音とビートを手に入れるのと引き換えにヒップホップの“アングラ感”まで付けてしまったのに比べ、「パイス・トロピカル」はホーンも入った大所帯バンドによる、地上のカーニバル・ソングに仕上がっています。(「マシュ・ケ・ナダ」もヒップホップとして近年屈指の名曲でありますが。)

久々のカロリーニョス・ブラウンからセウ・ジョルジ、大御所ミルトン・ナシメント等ゲスト陣も豪華で、これからの季節にぴったりな、まさにブラジルの夏を思わせる一枚に仕上がっています。傑作!

 

 

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